美容師になる為に入学した美容学校では色々な技術を学びます。パーマの時のロットに髪に巻き付けるワインディング、カット、セット、着付け、美顔術、マニュキア等、学生の間は広く浅く一通り学びますが、まだまだ表面的な事だけで技術の入り口に立った位の所です。
インターンとしてスタート
美容学校を卒業後はインターン(実地修練)として美容学校の斡旋で皆、それぞれの美容室への修行先が決まります。まず最初の仕事はシャンプーです。営業終了後、先輩をモデルにして、もう一人の先輩からシャンプー指導を受けます。
インターン生の最初のテスト
10日間位、トレーニングして、その後にオーナーのシャンプーをします。これは実質的なシャンプーのテストになります。
シャンプー後、オーナーから「明日から御客様のシャンプー、お願いね!」と言われるとテスト合格です。
不合格の場合にはオーナーから色々と注意され、この時点で厳しいオーナーの言葉に傷つき我慢出来ずに美容師の道を断念する人もいました。
一年間のインターンを終え国家資格の受験!
一年間のインターンを終え国家試験を受けます。各、都道府県が管轄になりますので日程さえ重ならなければ複数の都道府県の受験が出来ます。
合格したからと言っても実際に御客様を施術するレベルには達してはいません。下仕事をしながら先輩の仕事を見て覚えて行きますが休みの日には様々な講習会へ参加して少しずつ技術を習得して行きます。
基礎的な技術が身に付き実際に御客様を担当出来る様になっても日々、トレンドが移り変わって行きます。美容師として仕事をしている以上は移り変わるトレンドの習得は必須になります。
移り変わるトレンド!いち早く技術の習得を!
昔は東京での流行が地方に伝わるのは一年後、等と言われていました。しかし昨今はメディアの発達により、そんな事は無く何処であろうが瞬時に情報が伝わる時代になりました。
ですから御客様も、いち早くトレンドに気付き最旬のスタイルを求めてきます。
「このスタイルにして下さい」と芸能人等の画像を提示されます。美容師が最旬のトレンドのスタイルを未だ学んでいない場合だと「このスタイル、一体どうやって作るのだろう?」と狼狽する事になります。
それは美容師にとっては非常に辛い事なので御客様より、いち早くトレンドに気付き先に学んでいる必要があります。
そうゆう意味で美容師は国家資格を取って終わりでは無く、どんなスタイルでも作れる様になるよう国家資格を取ってからが始まりの様な気がします。
冠婚葬祭等のセットスタイルを提供していない美容室のお客様からの依頼
美容室を始めて色々な方に利用して頂き御世話になっています。長年、私を信頼して来て下さっている方が殆どですが時々、当店の御客様で無い方から予約を頂く時があります。
どうゆう場合かと言うと、いつも通っている美容室が冠婚葬祭やパーティー等で着物やドレスの為のヘアスタイルを提供してない美容室の場合です。
そうゆう場合に友人、知人を頼りに予約が入ります。
私がセットスタイルを勉強に行く所の講師の先生は良く言われますが「当店はセットスタイルはやりません」と言うけれど本当は「セットスタイルはやれません」が本当の事だよね!と...
そうかもしれません。
信頼関係の無い御客様との闘い
この様な状況で来店された御客様は私との信頼関係は全く無いわけです。
ある日、この様な状況の中、ヘアセットの予約を受けました。
前日に髪の長さを確認しつつ、ヘアスタイルの打ち合わせの為に来店して頂き髪に付ける髪飾りも預かりました。
預かった髪飾りを見てビックリ!
造花のカサブランカの花、直径18cmと直径16cmのカサブランカを2輪ずつ合計4輪を髪飾りとして付けるとの事!こだわりが強くてどうしても4輪を付けたいとの事です。
こんなにも大きな花を4輪も付けるの?!
このお花をヘアスタイルと、その方のお顔にバランス良く溶け込んで馴染ませなければなりません。
この難問の課題の為に閉店後から練習様のウィッグで夜、遅く迄トレーニングです。
提示されたお客様の希望のヘアースタイルと髪飾りのカサブランカ
商売のお金儲けはどうでも良い!プライドの問題!
翌日この方の来店、一緒に御母様も付いてらして終わる迄ずっと一緒でした。
こだわりの強いこの方は口数も少なくニコリともせず、やり難い雰囲気が漂っています。「この美容師!私の気に入る様にやってくれるのかしら?」そんな気持ちが、ハッキリと伝わって来ます。
私は私で「絶対に最後は貴女を笑顔にさせてみせる!」「そうなる為に寝る間を惜しんで昨夜もトレーニングしたのだから!」と...
そんな想いは顔には、おくびにも出さずに秘めた闘志を燃やして挑みます。
もう、そうなると商売のお金儲け、お金の問題では無くプライドの問題になり金銭の事はどうでも良くなるのです。
セットが、もう終盤になる頃に御母様が「直ぐに戻りますから!」と言って車で出て行かれ10分程で戻って来られるました。
遂にお客様の顔が笑顔に!
お母様が戻られた時、娘さんのヘアーセットが終わる頃で一番の難問の大きな4輪のカサブランカの花もバランス良く収まりました。
この時、もう既に娘さんの顔は先程迄の顔とは打って変わって笑顔に変わっていました。私は心の中で相手を「笑顔にする事が出来た!勝った!!」と思いました。
側で見ていた御母様は、こだわりが強く難しい我が娘の事が、ある意味、心配で見守っている様な感じがありました。そしてお母様も娘さんの笑顔を見てホットした様子。
そして「これ!美味しいので取り寄せしたので良かったら、どうぞ」と私に差し出すではありませんか!!
さっき車で家まで取りに帰ったのでしょうか?娘さんの笑顔でお母様も嬉しくなって、お気使いして下さったのでしょうか??よく分かりませんが??
兎に角お二人共、笑顔で帰って行かれて本当に良かったと私自身も安堵しました。
美容師の仕事は御客様の感情を動かす事
美容師の仕事は品物を売るわけでは無く御客様の感情を動かす仕事だと思います。
提供した技術により御客様が気分が良くなり、笑顔になれるのか?そうでないのか?
ここが一番の鍵になる所だと思います。
いかに常連さんで信頼関係が構築されている御客様だとしても、多少なりとも日々、毎回、毎回、最後には気分が良くなって頂かなければならない!!この繰り返しです。
ハードルの高い仕事の依頼の時程、トレーニングを積み重ねたり苦しいのは事実です。特に美意識の高い御客様ほど見る目は厳しくなり毎回、緊張感を持って仕事をして最後は相手を笑顔にする!!
長い目で見ると、この繰り返しの中で知らず知らずのうちに自身のスキルアップも可能になっているのだと思います。
ハードルが高ければ高い程、後で御客様を笑顔にさせる事が出来た時、その瞬間こそ美容師としての醍醐味を味わう事が出来ると感じています。
これからも苦しい仕事に出会う度に、一つ一つハードルを超えレベルアップを目指し頑張って行きます。