日々、色々なお客様とのご縁を頂き仕事をさせて頂いていると月日が経つ程に、悲しいかな、今生の別れを、しなければならない日があります。
連絡を頂き一日の仕事が終わり、お通夜に駆けつけ御別れをして来ます。誰人たりとも永遠に生き続ける事は出来ません。今世の使命を終えたら、おいとましなければなりません。
久しくお見受けしないH様
長年、来店して下さっていたH様、最近ちっともお見受けしないなーと気になっていました。最後の予約は当日のキャンセル依頼を受けていました。最後の来店の時には私の母の姿を見ては四国の田舎の母を思い出したと言って涙ぐんでいらっしゃいました(この時は既に病気に、なられていたようです)それ以来、全くお見受けしていないのです。
お嬢様が朝夕、出勤の途中いつも当店の前の道を歩いて行かれます。偶然にもお会い出来ましたので「お母様、お元気ですか?」とお尋ねしました。「はい!元気です!」と仰られたので「お元気なら何よりです。宜しくお伝え下さい」とお話ししました。
お元気なら良かったわ!と思う反面、もう私の店には来ては下さらないのだな!とちょっと寂しい気持ちにもなりました。
この方、何者なの?
そんなある日、一人の男性がドアを開けて入って来られました。パッと見、酷く生活に疲れ果てた様な印象を受けました。この方、一体、何者なのだろうか?何の用事なんだろうか?少し警戒心を持ってしまう様な雰囲気がありました。「14時半迄にヘアーカットをして欲しい。自分では無く妻のカットだ!」と仰いました。
奥様のカットを御主人が予約にいらっしゃるなんて、どうゆう事なの?と思い「奥様は具合が悪いのですか?」と、お聞きすると「イヤ!死んでしまった!」と仰るではありませんか!「エッ!亡くなった方のヘアーカット依頼に、いらしたんだ!」何とこの男性こそH様のご主人だったのです。
御主人、曰くH様は一日も早く病気を治して、ここで(私の店)でヘアーカットするのを心待ちにしていたので、せめて最後くらいは奥様の望みを叶えてやりたい!との事でした。(奥様が最後の予約をされた時は体調が優れずキャンセルされた様です。)
応えられず申し訳ないです。
夕方、お通夜の始まる前、斎場へ出向く前に自宅にて奥様のヘアーカットを!との事でした。しかしカットして差し上げたくても、お客様の予約状況があるので、どうしても御主人の想いに応える事が出来なかったのです。
お断りした時の御主人のガッカリして悲しそうなお顔を見て私も本当に辛い想いでしたが、どう仕様もありませんでした。
御主人が帰って行かれた後、冷静になって考えると亡くなられた方のヘアーカットってどうやってやるのだろう?椅子に座って頂くのは無理だし横たわった状態で、ご遺体の向きを変え乍ら作業を行うのだろうな?等と考えさせられました。
最後のお別れ
早速、仕事を終えて斎場へ駆けつけました。
もう一年以上もお会いしていませんでした。
少し痩せられはいましたが綺麗なお顔で斎場の方にヘヤーカットして頂いたとの事でサッパリとしたお姿にホッとして胸を撫で下ろして帰って来ました。
Hさん!長年に渡り本当に有り難う御座いました。どんなにか、お辛かった事でしょう!
ゆっくり休んで充電して下さいね!
生命は永遠ですから!